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moon

久々に漫画のレビューでも。


ハタキ/野中英次(講談社)

クロ高の作者の新作ギャグ漫画です。
今回は、謎のペットをやる気の無い中年(既婚)が飼う話です。
乱暴な言い方をさせてもらうならば、この作者の作品はどれも大体内容が一緒です。
場面設定などの違いはあっても、登場人物の行動はあまり違いがないというか。
ただ、誤解のないように言うと、それがこの作者の作品の良さでもあります。
ドリフや、水戸黄門のような偉大なマンネリズム(勿論ほめ言葉です。)を楽しむ気持ちで読む作品ではないかと。
前置きは長くなりましたが、このハタキという漫画はそういった野中節を残しながら、冒険心も感じられる作品でした。
それが最も感じられる部分は、ハタキというキャラを中心に物語が(今のところ)展開していってるという点です。
ハタキというタイトルなのですから当然といえば当然なのですが、この作者の作品の場合、キャラの出入りがやたら激しかったり、主人公が全く出てこなかったり、出ても一言しかしゃべらなかったりってことが普通にあるからです。
例えば、クロ高において、フレディが序盤はかなりの頻度オチに使われているのに、後半はあまり登場しなかったり、主人公の神山が何週も出番が無かったりとか。
なので、他の漫画では当然なことでも、この漫画に限っては主要なキャラを巡って物語が展開するという点で、新鮮な印象を受けました。
で、読んでて思ったのは、これはマサルさんのメソがツボな人ってめっちゃ楽しめるんじゃないかってことです。
ハタキって子豚みたいな外見で可愛らしいんですが、正体不明の奇妙な生物って点でメソと設定が似てるんですよね。
ハタキの場合は、周りがそれを気づいてなかったりして、「志村うしろうしろ!」みたいなところが結構面白かったりするんですが。
あと、今回は装丁が可愛かったんで、クロ高の野中先生の作品とは最初気づきませんでした。
そういう意味では今までより手に取りやすいかも?
相変わらず、爆笑って感じのギャグ漫画じゃないんですよ。
でも、この熱量の低さが結構心地よいんですよね。


月光条例/藤田和日郎(小学館)

うしおととら、からくりサーカスの藤田先生の新作です。
青い月の光により何十年かに一度、おとぎばなしの世界がねじれてしまいます。
そのおとぎばなしは、猛き月光によって正されねばならない、という条例がタイトルである「月光条例」です。
主人公の月光、ヒロインの演劇部、おとぎばなしの住人・鉢かつぎを中心に読み手の世界に流れ込む、ねじれたおとぎばなしを正していく展開です。

この作者の作品は直球なので、今回もすごく好感が持てますね。
まず、おとぎばなしというテーマです。
子供の頃、おとぎばなしから学ぶことって実は多いんじゃないかと思います。
大人になってみると、単純なお話に感じてしまうこともあるかと思うんですが、子供が一番に善悪について考える機会ってもしかしたら、おとぎばなしかもしれません。
そういったテーマって、扱い方間違えると陳腐になってしまったり、難しいと思うんですよ。
でも、藤田作品の善悪描写についての真摯さはおとぎばなしに通じると思うんですよね。
そういう意味でもいいテーマじゃないかと思います。
主人公の月光も過去作品同様、そういう作品にふさわしい正しさを持ったキャラですよ。
各作品とも主人公を魅力的に描いているのは本当に見事だと思います。
最近は、こういう真っ直ぐな主人公も珍しくなりましたよね。

社会的にもそうなんですが、物語及び表現の世界でも善悪に対する迷いが表れてる作品がすごく多くなったように思います。
勿論、善悪ってそう簡単なものではなくて、個人の価値観の数だけ存在するともいえると思うんです。
ただ思うのは、例えば漫画などのレビューで勧善懲悪じゃない部分を評価しているものが未だに目に付くんですね。
でも、今そういう作品は腐るほどあると思うんです。
なんで、そんな今時珍しくもなんともない要素をあえて評価するのか疑問なんですが、もしかすると、逆説的な表現を無条件に良しとする風潮が若干あるのかもしれません。

作品において善悪を言及するって行為は非常に難しいと思います。
多くの物事は善悪二元論では論ずることができないということは、おそらく生きていれば感じることです。
しかし、そこで思考停止してしまう思うんですよ。
善悪なんて個人の価値観によるものだから考えても無駄…とか。
物事の善悪は決められないとしても、それについて考えることは無駄ではないと自分は思っています。
子供に人気のある作品でもそういった部分について、深く触れないものって最近多いように感じますね。
スタイリッシュだったり、萌えを追求するのは悪いことだと思いませんけど、単にそれだけの作品に感じるものは無いです。

繰り返しますが表現において、正しさを主張することは、読者にその答えを暗に委ねる何倍もエネルギーを使います。
善悪について読者の解釈に委ねるという行為は、問題提起といえますが、それが正しいかどうかを主張する場合、作者はその解答を持っていないことにはできないということです。
藤田作品はそういう点において、全力で取り組んでいるように感じます。

藤田作品の場合、どんなにかっこ悪くても人間として大切な部分を貫くっていうのが、逆にかっこいいんですよ。
たとえ、かっこいい名前の横文字の技やキャラが出てこなくても、登場人物が美男美女じゃなくても、すごくかっこいいんです。
この作品もそういう作品です。

余談的な部分の比率が多くなったのはご容赦ください…。


ぴよこの本棚

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コメント

>mutuhaさん

こんばんは〜。
本棚はひっそりやっているんで、気づかない人も多いかもです。
結構、豆に更新してたります。
のなー先生の一見やる気のなさそうな感じが面白いです。
装丁は、今までと比べたら可愛いので、気づきにくいかもです。
今までの表紙がおっさんだったりしてたので、今回はそれと比べると結構印象違うと思います。
月光条例いいですね。
今後、また楽しませてくれそうな雰囲気がしました。
相変わらず、期待を裏切らない方なので、うれしいですね。
またよかったら、本棚チェックしてみてください。

投稿: ぴよこ | 2008年7月 4日 (金) 03時49分

ぴよこさんこんばんは!

2日前にぴよこさんの本棚のぞかせてもらいましたww
ハタキがそこで発売しているのを知りまして^^
助かりました!!ありがとう、ぴよこさん!!
私もあの野中さんのテンションが好きです^^
水戸黄門(笑
レビュー、よかったですww
キャラへの愛着のなさは野中さんの味ですね〜。
装丁そんなに違うんですか?!
本屋さんで探したけれど見つからなかったのはそのせい?
またじっくり探してみますー^^


月光条例!
おもしろかったですね!
藤田さんの本は、心に残る部分が多くありますね〜。
買ってよかった!って気分になります。

よく考えたら本棚をのそいたら、最近のぴよこさんが読んだ本が分かるんですよね^^!

投稿: mutuha | 2008年7月 2日 (水) 22時25分

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